要点サマリー
- 補助金の賃上げ要件では、パート・アルバイトを含む全従業員の平均賃金を一定率以上引き上げることが求められるケースが一般的です。
- 時給制従業員の賃上げ計算では、時給額の引き上げ率や年間所定労働時間を考慮した平均賃金の算出が必要とされています。
- 計算方法や対象範囲は制度・公募回ごとに異なるため、最新の公募要領を必ず確認し、不明点は専門家への相談も検討しましょう。
パート・アルバイトの賃上げ計算が求められる背景
近年、多くの補助金・助成金制度において「賃上げ要件」が設定されています。これは、事業者の生産性向上や経営改善を支援するだけでなく、従業員の処遇改善を通じて経済全体の好循環を促す政策目的があるとされています。
特に、事業再構築補助金や小規模事業者持続化補助金、ものづくり補助金などでは、申請時または採択後に「給与支給総額の増加」や「最低賃金を上回る賃上げ率の達成」といった要件が課されることがあります。この際、正社員だけでなく、パートタイム労働者やアルバイトといった非正規雇用の従業員も計算対象に含まれるのが一般的です。
パート・アルバイトは時給制で働くケースが多く、正社員とは給与形態が異なります。そのため、賃上げ率の計算方法や平均賃金の算出方法について、実務上の疑問が生じやすい領域といえます。
パート・アルバイトの賃上げ計算とは
補助金における「賃上げ計算」とは、一般に、事業者が雇用する従業員全体の給与支給総額や平均賃金を、一定期間内に一定率以上引き上げることを指します。具体的な計算方法は制度ごとに異なりますが、多くの場合、以下のような要素が考慮されます。
対象となる従業員の範囲
公募要領では、「常時使用する従業員」や「雇用保険の被保険者」といった定義がなされることが一般的です。パート・アルバイトであっても、週20時間以上勤務し雇用保険に加入している場合は対象に含まれるケースが多いとされています。一方、日雇い労働者や短期アルバイトは対象外となる場合もあります。
賃上げ率の計算基準
賃上げ率は、「基準年度の給与支給総額」と「目標年度の給与支給総額」を比較して算出されることが一般的です。時給制の従業員については、時給額の引き上げ率だけでなく、年間の所定労働時間や実労働時間を考慮した総額ベースでの比較が求められる場合があります。
平均賃金の算出方法
平均賃金は、「給与支給総額÷対象従業員数」で算出されることが多いとされています。パート・アルバイトの場合、フルタイム換算(FTE)を用いるケースや、実際の支給総額をそのまま用いるケースなど、制度によって取り扱いが異なります。
一般的な計算の流れとポイント
ここでは、補助金申請時にパート・アルバイトの賃上げを計算する際の一般的な流れと、実務上のポイントを整理します。
ステップ1:対象従業員の確定
まず、公募要領に記載された「対象従業員」の定義を確認します。雇用保険の加入状況、勤務時間、雇用契約の期間などが判断基準となることが一般的です。パート・アルバイトであっても、一定の勤務時間を満たしていれば対象に含まれる場合が多いとされています。
ステップ2:基準年度の給与支給総額の算出
基準年度(多くの場合、申請年度の前年度や前々年度)における、対象従業員全体の給与支給総額を集計します。時給制の従業員については、「時給×年間労働時間」で年間支給額を算出し、賞与や手当がある場合はそれらも含めることが一般的です。
ステップ3:目標年度の給与支給総額の設定
公募要領で求められる賃上げ率(例:1.5%以上、3%以上など)を基に、目標年度の給与支給総額を設定します。時給を引き上げる場合は、新しい時給額と想定労働時間を掛け合わせて総額を算出します。
ステップ4:賃上げ率の確認
「(目標年度の給与支給総額 – 基準年度の給与支給総額)÷ 基準年度の給与支給総額 × 100」で賃上げ率を算出し、要件を満たしているかを確認します。
実務上のポイント
- 労働時間の変動に注意:パート・アルバイトは労働時間が変動しやすいため、時給を上げても総労働時間が減少すると給与支給総額が増えない場合があります。
- 賞与・手当の取り扱い:制度によっては、基本給のみを対象とする場合と、賞与・手当を含める場合があります。公募要領で明記されている範囲を確認しましょう。
- 最低賃金との関係:地域別最低賃金を下回らないことは大前提です。賃上げ後の時給が最低賃金を上回っているかも必ず確認します。
- 社会保険料の影響:賃上げにより社会保険の加入要件を満たす従業員が増える場合、事業者負担も増加します。この点も事前に試算しておくことが望ましいとされています。
公式・参考情報(一次情報リンク集)
パート・アルバイトの賃上げ計算に関する正確な情報は、各制度の公式サイトや公募要領で確認することが重要です。以下に主な一次情報源を掲載します。
- 中小企業庁:各種補助金の公募要領や申請の手引きが掲載されています。
- ミラサポplus:補助金・助成金の検索や、申請に関する基礎情報が提供されています。
- jGrants(補助金申請システム):電子申請の際に利用するポータルサイトです。
- 厚生労働省:雇用保険や最低賃金に関する情報が掲載されています。
- 経済産業省:産業政策や中小企業支援に関する最新情報が提供されています。
執筆時点の情報であり、制度内容は変更される可能性があります。最新の公募要領を必ずご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. パート・アルバイトも賃上げ計算の対象に含める必要がありますか?
A. 多くの補助金制度では、雇用保険の被保険者や一定時間以上勤務する従業員を対象とするため、パート・アルバイトであっても要件を満たせば計算対象に含まれることが一般的です。公募要領の「対象従業員」の定義を必ず確認してください。
Q2. 時給を上げたのに給与支給総額が増えない場合はどうすればよいですか?
A. 時給を引き上げても、労働時間が減少すると給与支給総額が増えないことがあります。この場合、労働時間の確保や他の手当の追加など、総額ベースで賃上げ率を満たす方法を検討する必要があります。具体的な対応は、公募要領や専門家にご相談ください。
Q3. 賃上げ計算に賞与は含まれますか?
A. 制度によって異なります。基本給のみを対象とする場合と、賞与・諸手当を含める場合があります。公募要領に明記されているため、該当箇所を確認しましょう。不明な場合は事務局への問い合わせや専門家への相談が推奨されます。
Q4. 最低賃金の引き上げと補助金の賃上げ要件は別ですか?
A. はい、別の概念です。最低賃金は法律で定められた下限であり、補助金の賃上げ要件はそれを上回る引き上げ率を求めるものです。最低賃金を遵守した上で、さらに一定率以上の賃上げを行う必要があります。
Q5. 賃上げ計算を間違えた場合、どうなりますか?
A. 申請時に計算ミスがあると、審査で不採択となる可能性があります。また、採択後に賃上げ要件を達成できなかった場合、補助金の返還を求められることもあります。正確な計算と記録の保管が重要です。
注意点
パート・アルバイトの賃上げ計算を行う際には、以下の点に注意が必要です。
- 公募要領の変更:補助金制度は公募回ごとに要件が変わることがあります。過去の情報をそのまま適用せず、最新の公募要領を必ず確認してください。
- 証拠書類の保管:賃上げの実施状況を証明するため、給与台帳、雇用契約書、タイムカードなどの書類を適切に保管しておくことが求められます。
- 労働法令の遵守:賃上げを行う際は、労働基準法や最低賃金法などの労働法令を遵守する必要があります。違法な労働条件での賃上げは認められません。
- 従業員への説明:賃上げの内容や時期について、従業員に対して丁寧に説明し、理解を得ることが望ましいとされています。
- 税務・社会保険への影響:賃上げにより、源泉徴収税額や社会保険料が変動します。これらの手続きについては、税理士や社会保険労務士など専門家に相談することが推奨されます。
専門家(行政書士)に相談を考えるタイミング
パート・アルバイトの賃上げ計算は、一見シンプルに見えても、実務上は多くの判断が必要となる場合があります。以下のようなタイミングでは、行政書士などの専門家への相談を検討することが有効とされています。
- 対象従業員の範囲が不明確な場合:雇用形態が多様で、どの従業員を計算対象に含めるべきか判断が難しいとき。
- 複数の補助金を同時に申請する場合:それぞれの制度で賃上げ要件が異なるため、整合性を保つための助言が必要なとき。
- 過去の賃上げ実績との整合性確認:前年度の申請内容と今回の計算に矛盾がないか確認したいとき。
- 申請書類の作成に不安がある場合:計算根拠を明確に示す必要があり、書類作成に専門的なサポートが必要なとき。
- 採択後の報告義務がある場合:賃上げ達成状況の報告書作成や、証拠書類の整理について助言を求めたいとき。
行政書士は、補助金申請の手続き全般をサポートする専門家です。計算方法の確認や書類作成のアドバイスを受けることで、申請の精度を高めることができるとされています。
採択後の負担と「補助金Manager」という選択肢
補助金の採択を受けた後は、事業の実施報告、経費の証拠書類整理、賃上げ達成状況の報告など、多くの事務手続きが発生します。特に、パート・アルバイトを含む全従業員の賃上げ状況を継続的に管理し、報告書にまとめる作業は、担当者にとって大きな負担となることがあります。
こうした採択後の手続き負担を軽減する選択肢の一つとして、補助金Managerのようなサービスがあります。補助金Managerは、採択後の事務手続きをサポートするツールやサービスを提供しており、書類整理や報告書作成の効率化を図ることができるとされています。
採択後の手続きに不安を感じる場合や、本業に集中したい場合には、こうしたサービスの活用も検討してみるとよいでしょう。詳しくはこちらからご確認いただけます。
まとめ
パート・アルバイトの賃上げ計算は、補助金申請において重要な要素の一つです。時給制従業員の給与支給総額を正確に算出し、公募要領で求められる賃上げ率を満たすことが求められます。計算方法や対象範囲は制度ごとに異なるため、最新の公募要領を必ず確認し、不明点は専門家に相談することが推奨されます。
要点:
- パート・アルバイトも賃上げ計算の対象に含まれることが一般的です。
- 時給額だけでなく、年間労働時間を考慮した総額ベースでの計算が必要です。
- 公募要領の最新情報を確認し、専門家のサポートも活用しましょう。
関連記事:補助金の賃上げ要件全般については、当メディアの他の記事もご参照ください。また、採択後の手続きについては補助金Managerで詳しい情報をご覧いただけます。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の申請可否や採否を保証するものではありません。補助金・助成金の要件、補助率、上限額、締切等は公募回ごとに変わります。最新かつ正確な情報は、各制度の公式サイト・公募要領を必ずご確認ください。掲載情報は執筆時点のものです。個別のご相談は、当社の行政書士へお問い合わせください。
監修:トリプルナイン株式会社(行政書士在籍)


