【要点サマリー】
多くの補助金制度では賃上げ計画を提出することで加点が得られる仕組みがあります。本記事では、賃上げ加点を得るための計画作成の一般的な流れ、要件の確認方法、計画書作成のポイントを解説します。公募要領の確認と正確な数値の算出が重要です。
賃上げ加点とは何か?なぜ重要なのか
近年、政府は中小企業の賃上げを強く推進しており、多くの補助金制度において「賃上げ計画」を提出することで審査時に加点される仕組みが導入されています。事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金、持続化補助金など、主要な補助金の多くが賃上げ加点の対象となっています。
賃上げ加点は、採択率を高めるための重要な要素の一つとされています。同じ事業計画の内容であれば、賃上げ計画を提出した事業者の方が審査上有利になる可能性があるため、申請を検討する企業にとって無視できないポイントです。
ただし、賃上げ加点を得たからといって必ず採択されるわけではありません。あくまで審査の加点要素の一つであり、事業計画全体の質や実現可能性が最も重要です。また、加点を得るために無理な賃上げ計画を立てると、採択後に計画達成が困難になるリスクもあります。
賃上げ加点の仕組みと対象制度
賃上げ加点は、一般的に以下のような仕組みで運用されています。
加点の基本的な仕組み
多くの補助金制度では、「給与支給総額」や「事業場内最低賃金」を一定割合以上引き上げる計画を提出することで、審査時に加点されるとされています。具体的な要件は制度や公募回によって異なりますが、例えば以下のような基準が設定されることがあります。
- 給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる計画
- 事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上とする計画
- 補助事業実施期間中に一定の賃上げを達成する計画
これらの要件は公募要領に明記されており、制度ごと、回次ごとに変更される可能性があります。
主な対象制度
執筆時点で賃上げ加点が設定されている主な補助金制度には以下があります。
- 事業再構築補助金:給与支給総額の増加率や事業場内最低賃金の引上げに関する加点項目が設定されています
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金:賃上げ加点枠が設定され、一定の賃上げ計画を提出することで加点されます
- 小規模事業者持続化補助金:賃金引上げ枠が設定され、賃上げ計画を提出する事業者向けの枠があります
- IT導入補助金:一部の枠で賃上げ要件が設定されています
詳細は各制度の公式サイトおよび公募要領で必ずご確認ください。
賃上げ加点を得るための計画作成の一般的な流れ
賃上げ加点を得るための計画作成は、以下のような流れで進めることが一般的です。
ステップ1:公募要領で賃上げ要件を確認する
まず、申請する補助金の公募要領を入手し、賃上げ加点の要件を正確に確認します。公募要領には以下の情報が記載されています。
- 加点の対象となる賃上げの基準(給与支給総額の増加率、最低賃金の水準など)
- 計画期間(補助事業期間、3年間、5年間など)
- 対象となる従業員の範囲(正社員のみ、パート・アルバイトを含むかなど)
- 計画書の様式や記載事項
- 達成状況の報告義務
公募要領は回次ごとに更新されるため、最新版を必ず確認することが重要です。
ステップ2:現状の賃金データを整理する
賃上げ計画を作成するには、自社の現状を正確に把握する必要があります。一般的には以下のデータを整理します。
- 給与支給総額:直近の決算書や給与台帳から、全従業員への年間給与支給総額を算出します
- 事業場内最低賃金:自社で最も低い時給または月給を確認します
- 従業員数:正社員、パート・アルバイトなど雇用形態別の人数を把握します
- 地域別最低賃金:事業所所在地の地域別最低賃金を確認します(厚生労働省サイトで確認可能)
これらのデータは、賃上げ計画の基準値となるため、正確性が求められます。
ステップ3:賃上げの目標値を設定する
現状データをもとに、公募要領の要件を満たす目標値を設定します。例えば、給与支給総額を年率1.5%以上増加させる要件の場合、以下のように計算します。
計算例:
現在の給与支給総額:5,000万円
年率1.5%増加の場合:5,000万円 × 1.015 = 5,075万円(1年後)
3年後の目標:5,000万円 × (1.015)³ ≈ 5,229万円
事業場内最低賃金についても、地域別最低賃金に加算する金額を計算し、目標時給を設定します。
目標設定の際は、自社の経営状況や事業計画と整合性を取ることが重要です。無理な目標は達成困難となり、後々の報告義務を果たせないリスクがあります。
ステップ4:賃上げ計画書を作成する
公募要領に指定された様式に従い、賃上げ計画書を作成します。一般的な記載事項は以下の通りです。
- 基準年度の給与支給総額、事業場内最低賃金
- 目標年度の給与支給総額、事業場内最低賃金
- 増加率または増加額
- 賃上げを実現するための具体的な取組み
- 計画達成の見込みと根拠
計画書には、単に数値を記載するだけでなく、「なぜその賃上げが可能なのか」「どのような取組みで実現するのか」を具体的に説明することが求められる場合があります。補助事業による生産性向上や売上増加との関連性を示すことが一般的です。
ステップ5:必要書類を準備する
賃上げ計画書とともに、以下のような書類の提出を求められることがあります。
- 直近の決算書(給与支給総額の根拠)
- 給与台帳の写し
- 就業規則や賃金規程
- 従業員名簿
必要書類は公募要領に明記されていますので、漏れなく準備します。
ステップ6:申請書類と一緒に提出する
作成した賃上げ計画書と必要書類を、補助金の申請書類一式とともに提出します。電子申請システム(jGrants等)を利用する場合は、指定されたファイル形式でアップロードします。
提出前に、計算ミスや記載漏れがないか、公募要領の要件を満たしているかを再度確認することが重要です。
公式情報・参考リンク
賃上げ加点に関する最新情報は、以下の公式サイトでご確認ください。
- 中小企業庁:各種補助金の公募情報
- 事業再構築補助金 公式サイト
- ものづくり補助金 公式サイト
- 小規模事業者持続化補助金 公式サイト
- jGrants(補助金申請システム)
- 厚生労働省:地域別最低賃金
- ミラサポplus:補助金・助成金の検索
よくある質問(FAQ)
Q1. 賃上げ加点を得ると必ず採択されますか?
A. いいえ、賃上げ加点は審査時の加点要素の一つであり、採択を保証するものではありません。事業計画の内容、実現可能性、政策的な意義など、総合的な審査が行われます。賃上げ加点はあくまで審査を有利にする要素の一つとお考えください。
Q2. 賃上げ計画を達成できなかった場合はどうなりますか?
A. 一般的に、賃上げ計画を達成できなかった場合、補助金の一部返還を求められることがあります。制度によっては、未達成の理由を報告し、やむを得ない事情と認められれば返還が免除される場合もあります。詳細は各制度の公募要領や交付規程をご確認ください。無理な計画は避け、実現可能な範囲で設定することが重要です。
Q3. パート・アルバイトの賃金も賃上げ計画に含める必要がありますか?
A. 制度によって異なります。給与支給総額の増加を求める場合は、一般的に全従業員(正社員、パート・アルバイト含む)の給与が対象となります。事業場内最低賃金の場合も、雇用形態を問わず最も低い賃金が基準となります。公募要領で対象範囲を必ず確認してください。
Q4. 賃上げ計画の基準年度はいつですか?
A. 多くの制度では、申請時の直近決算年度や、補助事業開始前の年度が基準年度とされています。具体的な基準年度は公募要領に明記されていますので、ご確認ください。基準年度を誤ると計算が全て間違ってしまうため、注意が必要です。
Q5. 賃上げ計画書の作成を専門家に依頼できますか?
A. はい、行政書士などの専門家に依頼することが可能です。賃上げ計画は正確な数値計算と公募要領の理解が必要なため、不安がある場合は専門家への相談をご検討ください。ただし、計画の実行責任は事業者自身にありますので、内容を十分に理解した上で提出することが重要です。
賃上げ計画作成時の注意点
計算ミスに注意する
給与支給総額の増加率や事業場内最低賃金の計算は、正確性が求められます。小数点以下の端数処理や、複利計算の方法など、公募要領に指定がある場合はそれに従います。計算ミスがあると要件を満たさず、加点が得られない可能性があります。
実現可能な計画を立てる
加点を得たいがために無理な賃上げ計画を立てると、採択後に計画達成が困難になり、補助金の返還リスクが生じます。自社の経営状況、補助事業による効果、市場環境などを総合的に考慮し、実現可能な範囲で計画を立てることが重要です。
補助事業との整合性を確保する
賃上げ計画は、補助事業による生産性向上や売上増加と関連付けて説明することが一般的です。補助事業の内容と賃上げ計画に整合性がないと、審査時に疑問を持たれる可能性があります。事業計画全体の中で、賃上げがどのように実現されるのかを明確に示すことが重要です。
達成状況の報告義務を理解する
多くの制度では、賃上げ計画の達成状況を定期的に報告する義務があります。報告を怠ると、補助金の返還を求められることがあります。採択後の報告スケジュールや必要書類を事前に確認し、対応できる体制を整えておくことが重要です。
最新の公募要領を確認する
賃上げ加点の要件は、公募回ごとに変更される可能性があります。過去の情報や他者の経験談だけに頼らず、必ず最新の公募要領を確認してください。執筆時点の情報と実際の公募時の要件が異なる場合がありますので、ご注意ください。
専門家(行政書士)への相談を検討するタイミング
賃上げ計画の作成は、正確な数値計算と公募要領の理解が必要です。以下のような場合は、行政書士などの専門家への相談をご検討ください。
- 給与支給総額の計算方法が分からない:決算書のどの項目を使うべきか、役員報酬を含めるべきかなど、判断に迷う場合
- 公募要領の要件が理解できない:専門用語が多く、自社が要件を満たすか判断できない場合
- 複数の補助金を同時に申請する:それぞれの賃上げ要件が異なり、整合性を取る必要がある場合
- 過去に賃上げ計画で不採択になった:計画書の内容や計算に問題があった可能性があり、専門的なアドバイスが必要な場合
- 時間的余裕がない:申請期限が迫っており、正確な計画書を短期間で作成する必要がある場合
専門家に相談することで、計算ミスや要件の誤解を防ぎ、より精度の高い賃上げ計画を作成できる可能性があります。ただし、最終的な計画の実行責任は事業者自身にありますので、専門家の助言を受けつつも、内容を十分に理解することが重要です。
採択後の負担を軽減する選択肢
補助金の採択後は、賃上げ計画の達成状況報告をはじめ、実績報告、経費の証憑整理、効果報告など、多くの手続きが発生します。これらの手続きは専門的な知識を要し、本業と並行して進めることが負担となる場合があります。
採択後の手続き負担を軽減する選択肢の一つとして、補助金Managerのようなサポートサービスの利用を検討することもできます。こうしたサービスは、実績報告書の作成支援、経費の整理、賃上げ達成状況の報告など、採択後の各種手続きをサポートするものです。
ご自身で対応される場合も、専門家のサポートを受ける場合も、それぞれにメリット・デメリットがあります。自社の状況に応じて、最適な方法をご検討ください。詳しくはこちらからご確認いただけます。
まとめ
【本記事の要点】
- 賃上げ加点は多くの補助金で採択率を高める要素の一つとされているが、採択を保証するものではない
- 計画作成は公募要領の確認、現状データの整理、目標設定、計画書作成、書類準備の流れで進める
- 実現可能な計画を立て、計算ミスに注意し、補助事業との整合性を確保することが重要
賃上げ加点を得るための計画作成は、正確な理解と慎重な準備が求められます。公募要領を熟読し、自社の状況に合った実現可能な計画を立てることが、採択後のリスクを減らすことにもつながります。
採択後の手続きについてもあらかじめ理解しておくことで、より安心して補助金を活用できます。必要に応じて専門家への相談や、補助金Managerのようなサポートサービスの利用もご検討ください。
【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の申請可否や採否を保証するものではありません。補助金・助成金の要件、補助率、上限額、締切等は公募回ごとに変わります。最新かつ正確な情報は、各制度の公式サイト・公募要領を必ずご確認ください。掲載情報は執筆時点のものです。個別のご相談は、当社の行政書士へお問い合わせください。
監修:トリプルナイン株式会社(行政書士在籍)


