要点サマリー
- 給与支給総額の算定範囲は補助金制度ごとに定義が異なり、公募要領での確認が必須です
- 一般に基本給・諸手当・賞与等が含まれ、退職金・福利厚生費等は除外されるケースが多いとされています
- 算定方法や対象期間は制度により異なるため、最新の公式情報と専門家への相談が重要です
給与支給総額の算定が求められる背景
多くの補助金制度では、事業者の成長性や従業員への還元状況を測る指標として、給与支給総額の増加が要件に含まれることがあります。特に事業再構築補助金やものづくり補助金など、経済産業省・中小企業庁が所管する制度では、付加価値額の向上とともに給与支給総額の増加が求められる場合があります。
これは、補助金を活用した事業拡大が従業員の処遇改善につながることを期待する政策目的によるものです。申請時や事業完了後の報告において、正確な算定範囲の理解が求められます。
ただし、算定範囲の詳細は制度ごとに異なるため、個別の公募要領を確認することが不可欠です。本記事では一般的な考え方を整理しますが、最終的な判断は公式情報に基づいて行う必要があります。
給与支給総額とは何か
一般的な定義
給与支給総額とは、一般に事業者が従業員に対して支払う給与・賃金の合計額を指します。補助金制度においては、「人件費」や「労務費」とは異なる概念として扱われることが多く、公募要領で明確に定義されています。
多くの制度では、所得税法上の給与所得に該当する支払いを基準とする考え方が採用されていますが、制度によって細かな違いがあるため注意が必要です。
算定の目的
補助金制度における給与支給総額の算定は、主に以下の目的で行われます。
- 事業拡大に伴う雇用の質的向上の確認
- 付加価値額増加要件の達成状況の把握
- 補助事業の経済効果の測定
これらの目的から、算定範囲は「従業員への直接的な報酬」に焦点が当てられることが一般的です。
一般的に含まれる項目
基本給・諸手当
給与支給総額には、一般に以下の項目が含まれるとされています。
- 基本給(月給・日給・時給等)
- 役職手当、職務手当
- 時間外労働手当(残業代)
- 休日労働手当、深夜労働手当
- 通勤手当(非課税限度額を超える部分を含む)
- 家族手当、住宅手当
これらは所得税法上の給与所得として課税対象となる支払いであり、多くの補助金制度で算定範囲に含まれます。
賞与・一時金
賞与(ボーナス)や一時金についても、一般に給与支給総額に含まれるとされています。ただし、算定対象期間内に支給されたものに限られることが通常です。
決算賞与や業績連動型の報酬も、支給実績があれば含まれる場合が多いとされていますが、制度によって取り扱いが異なる可能性があります。
現物給与
現物給与(食事の提供、社宅の貸与など)については、所得税法上は給与として扱われますが、補助金制度における給与支給総額の算定では除外されるケースもあります。公募要領での確認が必要です。
一般的に除外される項目
退職金・退職給付
退職金や退職給付引当金の繰入額は、一般に給与支給総額の算定から除外されます。これは、退職金が在職中の労働対価ではなく、退職時の一時的な支払いであるためです。
確定拠出年金(企業型DC)の掛金についても、制度によって取り扱いが異なる場合があります。
法定福利費
社会保険料の事業主負担分(健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険)は、一般に給与支給総額には含まれません。これらは法定福利費として別途計上されるものです。
福利厚生費
以下のような福利厚生に関する費用も、通常は算定範囲から除外されます。
- 慶弔見舞金
- 社員旅行費用
- 健康診断費用
- 社内レクリエーション費用
- 制服・作業服の支給
これらは従業員の福利厚生のための支出であり、直接的な労働対価ではないためです。
役員報酬
役員報酬の取り扱いは制度によって大きく異なります。多くの補助金制度では、給与支給総額の算定対象は「従業員」に限定され、役員は除外されることが一般的です。
ただし、使用人兼務役員の使用人部分の給与については含まれる場合もあるため、個別の確認が必要です。
算定時の一般的な注意点
対象期間の確認
給与支給総額の算定では、対象期間の設定が重要です。多くの制度では以下のような期間設定がなされます。
- 事業年度単位(決算期に基づく)
- 暦年単位(1月~12月)
- 補助事業実施期間
支給日基準か発生基準かについても、公募要領で明示されていることが一般的です。月末締め翌月払いの給与をどの期間に算入するかなど、細かな取り決めを確認する必要があります。
人数・範囲の確認
算定対象となる従業員の範囲も制度により異なります。
- 常勤従業員のみか、パート・アルバイトを含むか
- 派遣社員の取り扱い
- 出向者の取り扱い
- 海外勤務者の取り扱い
これらの点について、公募要領で明確に定義されているか確認することが重要です。
増加率の計算方法
補助金制度で給与支給総額の増加が要件となる場合、基準年度と比較年度の設定、増加率の計算式が指定されています。
一般的には「(比較年度の給与支給総額 – 基準年度の給与支給総額)÷ 基準年度の給与支給総額 × 100」といった計算式が用いられますが、制度ごとに異なる可能性があります。
証拠書類の準備
給与支給総額の算定結果を示すため、以下のような書類の提出が求められることが一般的です。
- 給与台帳
- 賃金台帳
- 源泉徴収簿
- 法定調書合計表
- 労働者名簿
これらの書類が整備されていることを前提に、算定を行う必要があります。
公式・参考情報
給与支給総額の算定に関する最新かつ正確な情報は、各制度の公式サイトで確認できます。
- 中小企業庁:各種補助金制度の公募要領が掲載されています
- 経済産業省:補助金政策の全体像や最新情報を確認できます
- ミラサポplus:中小企業向け支援情報の総合サイトです
- jGrants:補助金の電子申請システムで、各制度の詳細を確認できます
個別の補助金制度については、それぞれの事務局サイトで公募要領をダウンロードし、最新版を確認することが必須です。執筆時点の情報は変更される可能性があるため、申請前には必ず公式情報をご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q1: 給与支給総額の算定は税込みですか、税抜きですか?
一般に、給与支給総額は源泉徴収前の総支給額(税込み)で算定されることが多いとされています。これは所得税法上の給与所得の考え方に基づくものです。ただし、制度によって定義が異なる可能性があるため、公募要領での確認が必要です。
Q2: 通勤手当は全額含まれますか?
通勤手当については、所得税法上の非課税限度額(月額15万円)を超える部分も含めて、支給した全額を算定に含めるのが一般的とされています。ただし、制度によっては非課税部分を除外する場合もあるため、個別の確認が推奨されます。
Q3: 算定対象期間中に退職した従業員の給与は含まれますか?
対象期間中に在籍していた期間の給与については、一般に算定に含まれるとされています。退職金は除外されますが、在職中に支給された給与・賞与は含まれることが通常です。期間の区切り方については公募要領の定義に従う必要があります。
Q4: パート・アルバイトの給与も含まれますか?
多くの制度では、雇用形態にかかわらず、従業員として雇用している者への給与支給は算定に含まれるとされています。ただし、一部の制度では常勤従業員のみを対象とする場合もあります。対象範囲は公募要領で明示されていることが一般的です。
Q5: 算定方法を間違えた場合、どうなりますか?
給与支給総額の算定を誤った場合、要件未達と判断され、補助金の交付決定が取り消されたり、返還を求められたりする可能性があります。不明点がある場合は、申請前に事務局や専門家に確認することが重要です。
算定時の注意点
制度ごとの定義の違い
最も重要な注意点は、給与支給総額の算定範囲が補助金制度ごとに異なるという点です。同じ経済産業省系の補助金でも、事業再構築補助金とものづくり補助金では定義が異なる場合があります。
過去の申請経験や他の制度での算定方法をそのまま適用せず、必ず当該制度の公募要領を確認することが必須です。
証拠書類との整合性
算定結果は、提出する証拠書類(給与台帳、源泉徴収票等)と完全に整合している必要があります。書類間で数字が異なると、審査で指摘を受けたり、最悪の場合は不正とみなされたりする可能性があります。
複数の書類を突合し、整合性を確認するプロセスを設けることが推奨されます。
増加要件の達成可能性
給与支給総額の増加が要件となっている場合、事業計画の段階で達成可能性を慎重に検討する必要があります。過度に楽観的な計画は、事業完了後の報告で要件未達となるリスクがあります。
人員計画、賃金水準の見通し、事業の収益性などを総合的に勘案し、実現可能な計画を立てることが重要です。
記録の保存
補助金の交付を受けた後も、一定期間(一般に5年程度)は関連書類の保存が義務付けられることが多いとされています。給与支給総額の算定根拠となる書類も含まれるため、適切に保管する体制を整えておく必要があります。
専門家(行政書士)に相談を考えるタイミング
給与支給総額の算定は、一見シンプルに見えても、実務上は多くの判断を要する場合があります。以下のような状況では、行政書士など補助金申請に詳しい専門家への相談を検討することが推奨されます。
相談を検討すべきケース
- 公募要領の定義が不明確で、自社の状況への適用方法が判断できない場合
- 複雑な雇用形態(出向、派遣、海外勤務等)があり、算定範囲の判断が難しい場合
- 過去に算定を誤った経験があり、今回は確実に正しく行いたい場合
- 増加要件の達成可能性について、客観的な評価が必要な場合
- 複数の補助金を同時に申請しており、それぞれの算定方法を整理したい場合
行政書士は、補助金申請の実務に精通しており、公募要領の解釈や算定方法のアドバイスを提供できます。ただし、税務上の判断(所得税の課税関係等)については税理士の業務範囲となるため、必要に応じて税理士との連携も検討することが適切です。
相談のタイミング
相談は、申請準備の早い段階で行うことが効果的です。算定方法を誤ったまま申請書を作成してしまうと、修正に多大な時間を要する可能性があります。
特に、公募開始直後に公募要領を確認し、不明点があれば速やかに専門家に相談することで、余裕を持った申請準備が可能になります。
採択後の負担と「補助金Manager」という選択肢
補助金の採択を受けた後は、給与支給総額の実績報告を含む様々な手続きが発生します。事業完了後の実績報告では、計画時に算定した給与支給総額が実際にどう推移したかを証拠書類とともに報告する必要があります。
この報告作業は、通常業務と並行して行う必要があり、多くの事業者にとって大きな負担となることがあります。特に、複数年度にわたる報告が求められる場合や、複数の補助金を同時に活用している場合は、管理が複雑になります。
手続き負担を軽減する選択肢
こうした採択後の手続き負担を軽減する選択肢の一つとして、補助金の事務手続きをサポートするサービスがあります。補助金Managerは、採択後の実績報告や各種手続きをサポートするサービスです。
給与支給総額の実績集計や証拠書類の整理など、煩雑な作業を効率化することで、本業に集中しやすい環境を整えることができます。採択後の手続きに不安がある場合や、社内のリソースが限られている場合には、こうしたサービスの活用も検討する価値があるでしょう。
詳しい内容については、採択後の手続きの負担を相談してみる →
まとめ
給与支給総額の算定範囲は、補助金制度ごとに公募要領で定義されており、一般的には基本給・諸手当・賞与等が含まれ、退職金・法定福利費・福利厚生費等は除外されることが多いとされています。ただし、制度による違いがあるため、必ず最新の公募要領を確認することが不可欠です。
算定時には対象期間・対象者の範囲・証拠書類との整合性に注意し、不明点がある場合は専門家への相談を検討することが推奨されます。採択後の実績報告も含めた全体の手続き負担を考慮し、必要に応じて補助金Managerのようなサポートサービスの活用も選択肢となります。
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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の申請可否や採否を保証するものではありません。補助金・助成金の要件、補助率、上限額、締切等は公募回ごとに変わります。最新かつ正確な情報は、各制度の公式サイト・公募要領を必ずご確認ください。掲載情報は執筆時点のものです。個別のご相談は、当社の行政書士へお問い合わせください。
監修:トリプルナイン株式会社(行政書士在籍)


