賃上げ加点の対象になりやすい補助金の一般的な傾向と申請時のポイント

賃上げ・加点・要件

【この記事の要点】
1. 賃上げ加点は事業再構築補助金・ものづくり補助金・IT導入補助金など主要な補助金で広く採用されている傾向があります
2. 一般に「給与支給総額の年率平均1.5%以上増加」「事業場内最低賃金の引上げ」などが加点要件とされています
3. 公募回ごとに要件・基準が変わるため、必ず最新の公募要領で確認し、証明書類を適切に準備することが重要です

賃上げ加点とは何か?なぜ注目されているのか

近年、中小企業が補助金を申請する際に「賃上げ加点」という言葉を目にする機会が増えています。これは、従業員の給与を引き上げる計画を示すことで、審査時に加点を受けられる仕組みです。

政府は「成長と分配の好循環」を経済政策の柱に掲げており、企業による賃上げを強く後押ししています。補助金制度においても、賃上げに取り組む事業者を優遇する方向性が明確になっています。申請者にとっては、この加点要素を理解し活用することが、採択可能性を高める重要なポイントの一つとされています。

ただし、賃上げ加点の有無や具体的な要件は補助金の種類や公募回によって異なります。本記事では、一般的にどのような補助金で賃上げ加点が設けられているか、その傾向と申請時の注意点を整理します。

賃上げ加点が設けられている主な補助金制度

執筆時点において、賃上げ加点が設けられている代表的な補助金制度には以下のようなものがあります。

事業再構築補助金

事業再構築補助金は、新分野展開や業態転換など思い切った事業再構築に取り組む中小企業等を支援する制度です。公募要領では、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる計画や、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる計画を示すことで加点を受けられる仕組みが設けられています。

具体的な要件や加点基準は公募回ごとに見直されることがあるため、最新の公募要領を必ず確認する必要があります。

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)

ものづくり補助金は、中小企業等が行う革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を支援する制度です。こちらも賃上げ加点の枠組みが設けられており、一般に給与支給総額の増加率や事業場内最低賃金の引上げ幅が審査時の加点要素とされています。

公募要領では、賃上げ計画を申請時に提出し、補助事業終了後に実績報告で達成状況を確認する流れが示されています。

IT導入補助金

IT導入補助金は、中小企業等がITツールを導入する際の費用を支援する制度です。近年の公募では、賃上げ目標を設定することで補助率が優遇される類型が設けられる傾向にあります。

例えば、通常枠よりも高い補助率が適用される「デジタル化基盤導入類型」などで、賃上げ要件を満たすことが条件とされるケースがあります。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が行う販路開拓等の取組を支援する制度です。公募回によっては、賃金引上げ枠や賃上げ加点が設けられることがあります。

一般に、事業場内最低賃金を地域別最低賃金より一定額以上引き上げる計画を示すことで、加点や補助上限額の引上げが受けられる仕組みとされています。

賃上げ加点の一般的な要件と基準

賃上げ加点の具体的な要件は制度ごとに異なりますが、一般的に以下のような基準が設けられる傾向にあります。

給与支給総額の増加率

多くの補助金では、「給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる」といった数値目標が示されています。給与支給総額とは、役員報酬を除く全従業員への給与・賞与の合計を指すのが一般的です。

計画期間は補助事業終了後3〜5年間とされることが多く、毎年度の実績報告で達成状況を確認される仕組みとなっています。

事業場内最低賃金の引上げ

「事業場内最低賃金を地域別最低賃金より30円以上高い水準にする」「補助事業実施期間中に事業場内最低賃金を50円以上引き上げる」といった要件が設けられることがあります。

事業場内最低賃金とは、その事業場で最も低い時間給のことを指します。パート・アルバイトを含む全従業員が対象となるため、雇用形態全体を見渡した計画が必要です。

計画の申請と実績報告

賃上げ加点を受けるためには、申請時に具体的な賃上げ計画を提出し、補助事業終了後の報告期間中に実績を証明する書類(賃金台帳、就業規則等)を提出することが一般的に求められます。

計画を達成できなかった場合、加点が取り消されたり、補助金の一部返還を求められたりする可能性があるため、実現可能な計画を立てることが重要です。

賃上げ加点を活用する際のポイント

自社の賃金状況を正確に把握する

賃上げ計画を立てる前に、現在の給与支給総額、事業場内最低賃金、地域別最低賃金との差額などを正確に把握することが第一歩です。過去数年の推移も確認し、無理のない増加率を設定しましょう。

公募要領の最新版を必ず確認する

賃上げ加点の要件は公募回ごとに変更されることがあります。過去の情報や他の補助金の要件をそのまま適用せず、必ず申請する公募回の最新の公募要領を確認してください。

証明書類の準備を計画的に行う

賃金台帳、就業規則、労働者名簿など、賃上げ実績を証明する書類は日頃から整備しておくことが望ましいです。申請時や報告時に慌てて準備すると、不備が生じるリスクがあります。

社会保険労務士等の専門家に相談する

賃金制度の変更は労働条件の重要な変更にあたります。就業規則の改定、従業員への説明、労働基準監督署への届出など、労務管理上の手続きが必要になる場合があります。不安がある場合は、社会保険労務士等の専門家に相談することをお勧めします。

公式情報・参考リンク

賃上げ加点に関する最新の情報は、各補助金の公式サイトで公開されている公募要領をご確認ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 賃上げ加点を受けると必ず採択されますか?

A. いいえ、賃上げ加点はあくまで審査時の加点要素の一つであり、採択を保証するものではありません。事業計画の内容、実現可能性、政策的な意義など、総合的な審査が行われます。

Q2. 賃上げ計画を達成できなかった場合はどうなりますか?

A. 一般に、計画未達の場合は加点が取り消されたり、補助金の一部返還を求められたりする可能性があります。具体的な取扱いは公募要領に記載されていますので、必ず確認してください。やむを得ない事情がある場合は、事務局に早めに相談することが推奨されます。

Q3. パート・アルバイトの賃金も対象になりますか?

A. はい、一般に給与支給総額や事業場内最低賃金の計算には、パート・アルバイトを含む全従業員の賃金が含まれます。雇用形態による区別はないのが通例です。

Q4. 賃上げ加点の要件は毎回同じですか?

A. いいえ、公募回ごとに要件や基準が変更されることがあります。過去の公募要領の内容をそのまま適用せず、必ず最新の公募要領を確認してください。

Q5. 複数の補助金で同じ賃上げ計画を使えますか?

A. 賃上げ計画自体は同一のものを複数の補助金申請で使用することは可能ですが、補助金ごとに要件や基準が異なる場合があります。それぞれの公募要領に沿った計画書を作成する必要があります。

賃上げ加点を活用する際の注意点

実現可能な計画を立てる

加点を得たいがために無理な賃上げ計画を立てると、後で達成できずに補助金返還などのリスクを負うことになります。自社の経営状況、事業計画の収益見込み、業界の賃金水準などを総合的に考慮し、実現可能な計画を立てることが重要です。

労務管理上の手続きを適切に行う

賃金の引上げは労働条件の変更にあたります。就業規則の改定、従業員への説明と同意取得、労働基準監督署への届出など、労働関連法令に基づく手続きを適切に行う必要があります。これらの手続きに不備があると、後の実績報告時に問題となる可能性があります。

証明書類の保管を徹底する

賃上げ実績を証明するための書類(賃金台帳、就業規則、労働者名簿、源泉徴収票など)は、補助事業終了後も一定期間保管する義務があります。紛失や不備がないよう、計画的に整備・保管してください。

他の加点要素とのバランスを考える

賃上げ加点は重要な要素ですが、それだけで採択が決まるわけではありません。事業計画の革新性、実現可能性、地域経済への貢献など、他の審査項目もバランスよく充実させることが大切です。

専門家(行政書士)に相談を考えるタイミング

賃上げ加点を含む補助金申請は、事業計画の策定から書類作成、実績報告まで多岐にわたる作業が必要です。以下のような場合には、行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。

  • 初めて補助金を申請する場合で、全体の流れや必要書類がわからない
  • 賃上げ計画の立て方や、自社の状況に合った目標設定に不安がある
  • 複数の補助金を比較検討したいが、どれが自社に適しているか判断できない
  • 申請書類の作成に時間が取れず、本業に支障が出そうな場合
  • 過去に申請したが不採択だった経験があり、改善点を知りたい

行政書士は補助金申請の代行や書類作成支援を業務として行っており、最新の公募要領や審査傾向に精通しています。自社だけで進めることに不安がある場合は、早めに相談することで、申請の質を高めることができます。

採択後の手続き負担を軽減する選択肢

補助金は採択されて終わりではありません。むしろ採択後の実績報告、経費の証明、賃上げ計画の達成状況報告など、継続的な事務作業が発生します。特に賃上げ加点を受けた場合は、数年間にわたって賃金データを整理し報告する必要があります。

こうした採択後の手続き負担を軽減する選択肢の一つとして、補助金Managerのような管理ツールを活用する方法があります。経費の記録、証憑書類の整理、報告書作成のサポートなど、採択後の事務負担を減らすための機能が提供されています。

本業に集中しながら補助金の手続きを適切に進めたい場合は、こうしたツールの利用も検討してみてはいかがでしょうか。詳しくは採択後の手続きの負担を相談してみる →

まとめ

【要点】
1. 賃上げ加点は事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金など主要な補助金で広く採用されています
2. 一般的な要件は「給与支給総額の年率平均1.5%以上増加」「事業場内最低賃金の引上げ」などですが、公募回ごとに変わります
3. 実現可能な計画を立て、労務管理上の手続きを適切に行い、証明書類を計画的に準備することが重要です

賃上げ加点は、補助金の採択可能性を高める重要な要素の一つとされていますが、無理な計画は後のリスクにつながります。自社の経営状況を正確に把握し、実現可能な範囲で賃上げに取り組むことが大切です。

申請にあたっては、必ず最新の公募要領を確認し、不明点があれば事務局や専門家に相談しながら進めてください。採択後の手続き負担についても事前に理解し、必要に応じて管理ツールなどの活用も検討することをお勧めします。

【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の申請可否や採否を保証するものではありません。補助金・助成金の要件、補助率、上限額、締切等は公募回ごとに変わります。最新かつ正確な情報は、各制度の公式サイト・公募要領を必ずご確認ください。掲載情報は執筆時点のものです。個別のご相談は、当社の行政書士へお問い合わせください。

監修:トリプルナイン株式会社(行政書士在籍)